
上山の里山の夏鳥

毎年4月も下旬頃になりますと、市街地と山林の境界部、いわゆる里山と呼ばれるエリアにも続々と夏鳥たちがやってきます。もちろん上山にもたくさんやって来るのですが、皆さんご存じのように昨年秋ごろから各地でクマの出没が相次ぎ、どこに現れてもおかしくない状況となりました。生き物は好きですがさすがにクマは怖いです。私が主にフィールドにしている上山西部の里山への探鳥も控えざるをえなくなりました(涙)。
バードウオッチャーは基本一年中ソワソワしておりますが、夏鳥が押し寄せてくるその頃は特にもう、じっとはしていられません。夏鳥たちの動向が気になり朝早く目が覚め、出勤前にもフィールドに駆け付けていたはずの時節、まさかクマの脅威に阻まれ、安心して里山歩きもできなくなるとは思いもよりませんでした(涙)。
主に昨年までに撮影した写真とともに、本来であれば上山の里山でも会えるはずの、キラキラした宝石のような夏鳥たちをご紹介してまいります。再び里山歩きを楽しめるようになりましたら、ぜひ出かけて行ってバードウォッチングを楽しんでいただきたいとの思いから撮影場所も記載しています。♂♀の表記が無い鳥は雌雄同色です。

桜が散り里山の木々が芽吹く頃、真っ先にやって来るのはオオルリ。葉が茂る前で鳴き声も響くので見つけやすいのですが、たいてい高~い木の梢で囀っているので白いお腹ばかりが目立ち、美しい青い背中を見られることはなかなかありません。小川が流れる森や林にやって来るので、水浴びや水飲みに降りて来た時が観察のチャンスです。

観察しやすい里山の夏鳥の中で、私は個人的にキビタキはオオルリと並び両大関、将棋なら飛車・角にあたる存在ではないかと思っています。オオルリより柔らかで多彩な鳴き声を持っていますが、渡って来たばかりの頃は雄同士よく縄張り争いをしており、「ブブッ、ブブッ…」と蜂の羽音のような不思議な音を出し、取っ組み合いの激しいバトルを繰り広げている場面に出会うこともあります。

一見地味と思われるでしょうが、頭と背面の黒、斑のあるお腹の白、大きな目の周りのアイリングと嘴の黄色、クロツグミはこの三色のコントラストがとても美しい鳥です。北海道でバードウォッチングをしていた頃、私の中で夏鳥の横綱・王将の座はこのクロツグミでした。なんと言ってもひときわ響き渡るさえずりが素晴らしい。明朗でハキハキしたその声は森の中でずっと聴いていたくなります。

しかし上山にやって参りまして、私の中で長らく頂点に君臨していたクロツグミの座を揺るがす存在に出会いました。このサンコウチョウです。この鳥は北海道までは渡って来ないのです。まず見た目のインパクト!全身は黒っぽくとても小さいのですが、大きく鮮やかなブルーのアイリング、青い嘴、ツンツンしたヘアスタイル、そして最大の魅力は雄の長~い尾羽。飛ぶ様子はひらひらとリボンを振っているようで、その姿にはどこか南国の雰囲気が漂います。鳴き声がまた「ギィ…キュルキュル…フィフィ…ホイホイホイ!」という風でなんとも独特。サンコウチョウは噂には聞いていましたが、そう簡単に会えるとは思っていませんでしたので、このホイホイホイ!が聞こえてきた時は震えるほどの興奮を覚えました。「上山にも来るんだ!」と。 この鳥は静岡県の鳥になっているそうで、プロサッカーチーム・ジュビロ磐田のエンブレムにもあしらわれています。漢字で書くと「三光鳥」…その名前の由来も面白いですよ。

白とグレーのシンプルな見た目ですが、くりくりした大きな目と内緒話をしているような控えめなさえずりがとても可愛らしく、思わず「コサメちゃん」と呼んでしまいます。 警戒心が薄く目立つところにもよく出てきてくれて観察しやすい鳥です。

黄緑~オリーブ色の羽が美しい。常に動き回りすばしっこく姿をとらえにくいのですが「チヨチヨビー」という非常に特徴的な鳴き声で存在感を示します。○○ムシクイという鳥は他にも何種類かおり、姿形がそっくりで見ただけでは識別は難しいです。しかしそれぞれ独自の鳴き声を持っているので声で識別することができます。

大きな黄色い嘴とすべすべで触ってみたくなるような美しい羽が特徴。よく通る声で、図鑑では「キコキコキー…」「キキョ、キキー…」という風に表現されることが多いですが、私は「Tea or Coffee?」と聞かれているような気がして、「お茶がいいな~」などと返事をしています(汗)。イカルは山形では留鳥(一年中いる鳥)または漂鳥(国内を季節移動する)とされると思いますが、上山では春から秋にかけて特に活発に活動している印象です。特に秋は多くの幼鳥を含む群れを見ることがあります。

体長約11センチ、日本では最小クラスの鳥です。薄暗い林床を動き回り「シシシシシ…」という超音波の声で囀るので、初めは「虫?」と思うほど。残念ながら人間は加齢により、その声はだんだん聞こえにくくなるそうです。若いうちに聴いておきましょう!7月も後半になりますと、ポヤポヤの幼鳥がウロチョロしている場面に会うことが結構あります。

山椒を食べそうな名前ですが実際に食べるわけではなく、「ピリリ…ピリリ…」と鳴くので〝山椒は小粒でもぴりりと辛い〟ということわざが名前の由来と言われています。鳴きながらいつも高いところを飛んでおり、下に降りてくることは滅多になく撮影には苦労します。雄は頭と背中の黒味がより強く白黒のコントラストが鮮やかです。

上のツツドリ・ホトトギス・カッコウは体の大きい順に並べますと、カッコウ(35センチ)>ツツドリ(33センチ)>ホトトギス(28センチ)となります。よく似ているので識別に迷うことがありますが鳴いてくれれば一発ですし、よく見るとお腹の縞模様の太さや顔つきも違います。またこの3種(他にもいます)は、別の種の鳥の巣に卵を産み付けて子育てを任せる「托卵」をすることが知られています。他人(他鳥?)に子育てをさせるなんて!と思うかもしれませんが、彼らにとっても必ず成功するとは限らない(むしろ失敗の方が多いかも)一か八かの賭けのような子育てなのです。そんなことを考えるとちょっと見方が変わってきませんか?

その他、撮影が困難なので画像はほとんどないのですが、5月~6月の里山エリアでは、コルリやアカショウビン、他のムシクイ類、サシバやハチクマという渡りをする猛禽類の姿を見たり声を聞いたりすることもあります。いずれもより子育てに適した場所への移動途中と思われますが、市内で繁殖している可能性も充分にあります。
夏鳥たちは南の地からはるばる海を越え山を越え、わざわざ何をしに日本へ、そして上山までやって来るのか?それは繁殖のため、子孫を残すためです。これらの鳥たちがこの地を目指して来てくれ、力いっぱい囀り、パートナーを見つけて巣を作り、卵を産み温め……そしてちょうど今この夏の盛りの時期、新しい命を育んでいる最中です。中にはひと夏に2度、多いときは3度繁殖をする鳥もいます。これから家族で行動している場面に出会うこともあるでしょう。そして夏の終わりから秋にかけ、今度は南の地へ旅立って行きます。夏鳥たちが去り静かになったフィールドに立ちますと、来年の再会を願わずにはいられなくなります。
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